脱毛症とは
ひとくちに脱毛症といっても様々な原因があります。最も一般的にみられるのは「男性型脱毛症:AGA」と呼ばれ、いわゆる「はげてきた」状態です。ただし髪の毛が薄くなる原因はAGA以外にもあり、その治療の前に自身の状態がAGA由来なのか医師と相談する必要があります。
いろいろある脱毛症
脱毛症の原因は、最も一般的である、加齢などによる体内のホルモンの変化による「アンドロゲン性脱毛症」のほか、ストレスや栄養不足、ほかの病気や薬剤の影響などさまざまです。現れ方も男女では一部異なり、対処法も異なります。
男性にみられる脱毛症
多くの男性が加齢と共に抱えることになる、頭が「はげること」は男性型脱毛症AGAといって、現在では原因と治療法が確立されています。この他にも内部、外部からの要因で脱毛症を発症することがあります。
原因 | 頻出部位・状態 | |
男性型脱毛症AGA | 男性ホルモン派生物質、遺伝 | 頭頂部、前頭部 |
円形脱毛症 | 自己免疫疾患 | 円形の脱毛斑 |
皮膚炎による脱毛症 | 脂漏性皮膚炎などの疾患 | 頭皮の環境悪化 |
薬剤性脱毛症 | 特定の薬による副作用 | |
栄養失調による脱毛症 | 栄養不良 | 頭皮の乾燥など環境悪化 |
全身性疾患による脱毛 | 甲状腺炎、貧血、膠原病など | |
先天性脱毛症 | 遺伝 | 縮毛、結節毛 |
外傷や熱傷による脱毛 | 外部からの刺激 | 刺激を受けた部位 |
男性型脱毛症(AGA:Andorogenetic Alopecia)
男性の脱毛症、いわゆる「はげてくる」ことは、主に男性ホルモンの派生物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)が関係しています。この影響で毛包が十分に育つ前に髪の毛が抜けてしまうことになり、結果うす毛が進行します。その原因であるDHTの発生を防ぐのが内服するAGA治療薬です。
AGAは日本の成人男性の約30%(およそ1200万人)が罹患しているとされていますが、このうち何らかの治療を行っている人は半数以下に過ぎません。現在、厚生労働省で承認されているAGA治療薬は次の通りです。
内用薬 | プロペシア(フィナステリド) | |
ザガーロ(デュタステリド) | ||
外用薬 | ミノキシジル | |
塩化カルプロニウム |
*ミノキシジルの内用薬は日本では認可されていません。
円形脱毛症
円形脱毛症では、正常に機能しなくなった免疫が毛包を攻撃し、毛が抜け落ちてしまいます。よく言われるのはストレスが原因ということですが、これはあくまで誘因の一つであり、実際は原因不明の自己免疫疾患であるとされています。
皮膚炎による脱毛症
真菌などの感染(頭部白癬:しらくも)、脂漏性皮膚炎など頭皮の健康状態の悪化が原因で起こります。
薬剤性脱毛症
抗がん剤(化学療法、放射線治療)のほか、一般的な内服薬でも起こる可能性があります。
栄養失調による脱毛症
現代の日本での栄養失調は起こりづらいですが、肥満のためと称する断食や、拒食症などから栄養失調に陥り、これが原因で脱毛が起こることがあります。
全身性疾患による脱毛症
慢性甲状腺炎、鉄欠乏性貧血、亜鉛欠乏症、膠原病(エリテマトーデス)などにより起こる脱毛症です。
先天性脱毛症
生まれつき毛髪の成長に異常がみられる遺伝性疾患で、多くの場合は縮れて毛がまばらに生えます。髪の毛は途中で切れやすく、抜けやすい脱毛症です。
外傷や熱傷による脱毛
外傷や熱傷など外部からの刺激を受け、毛根が損傷を受けることで生じます。
女性に特にみられる脱毛症
女性の脱毛症は、男性に起こるAGAのようなはっきりとした症状は出にくいのが特徴です。ほか皮膚炎や薬剤、遺伝による脱毛症は男性と症状と原因が共通しています。
原因 | 主な部位 | |
女性型男性脱毛症 FAGA | 女性ホルモン、遺伝 | 分け目から全体 |
びまん性脱毛 | FAGAの一形態 | 全体的に密度が低まる |
多嚢胞性卵巣症候群 | 女性ホルモン | 全体的に密度が低まる |
牽引性脱毛 | 髪型による | 髪の毛の引張り |
抜毛症 トリコチロマニア | 心理的要因 | 髪の毛の引抜き |
女性型男性脱毛症(FAGA:female androgenetic alopecia)
女性の脱毛症は男性と異なり、現在のところ明確な発症メカニズムは解明されていません。加齢に伴って、健康的な髪の毛の生育に関わるエストロゲンの分泌量の低下などさまざまな要因が関与していると推測されています。女性ホルモンの変動が始まる更年期前後に発症することが多いです。
びまん(瀰漫)性脱毛症
髪の毛の密度が全体的に薄くなる特徴を持つ脱毛です。男性は頭頂部および生え際を中心に脱毛が見られますが、女性では頭髪全体のボリュームがなくなってゆきます。FAGAをはじめとする女性の脱毛症の現れ方の特徴です。
多嚢胞性卵巣症候群
男性ホルモンが過剰に産生される多嚢胞性卵巣症候群は、女性型脱毛症を引き起こすことがあります。脱毛症が若年で発症した場合、ホルモンの分泌異常を疑う必要があります。
牽引性脱毛
髪型によって、ひっ詰めた場合は生え際が、きつく縛った場合は分け目が、など毛の根元に長期間負荷がかかった部分に脱毛が起こることがあります。
抜毛症(トリコチロマニア)
美容以外の理由で頭髪を含む全身の毛を強迫的に引き抜く精神疾患のひとつで、はっきりとした原因は不明ですが、比較的思春期の女性に多いといわれています。
新型コロナと「急性休止期脱毛症」
毛周期(ヘアサイクル)とは、髪の毛が生えてから抜け落ち、再び新しく生え変わる周期のことを指します。健康な人では3~5年を一周期とし、この中で新しい毛に抜け変わる前にいったん成長が止まる時期を「休止期」と呼びます。
毛周期における「休止期」は髪の毛が伸びない時期で、非常に抜けやすい状態にあります。健康な人でも「休止期」にある毛根は時が来れば次の「成長期」に移行し、このバランスは保たれているので問題はありません。
しかし大きな手術や出産、過度なダイエット、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などウイルス感染症などが原因で「休止期」の毛根の割合が増えることがあります。
これが原因で一時的に頭部全体の脱毛が増えることを「急性休止期脱毛症」と呼びます。
また、鉄欠乏性貧血や亜鉛欠乏症などでは「休止期」の毛根の割合の減少が長期間に渡り「慢性休止期脱毛症」に陥ることがあります。
脱毛症の治療
それぞれの治療は脱毛症の原因によって異なりますが、主として薬物療法が行われます。男性のAGAに対しては比較的わかりやすい治療法が選べるようになりました。女性の脱毛症FAGAに対しての治療法は、男性のAGA治療薬と一部重複するものもありますが、ホルモンバランスなど、より総合的な観察がとられます。これら以外の脱毛症には、それぞれに呼応した治療が必要です。
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